1日1冊レビューし太郎

おススメの本ご紹介します。本の紹介を通して、自分の人生観や経験などをお話しします。日本の大学を卒業後、ALLEX Programに参加するために渡米。Missouri州のWashington大学、NY州のUnion大学、そしてHarvard大学で日本語教員として働きました。このブログでは、おススメの本の紹介を通して、自分の人生観や経験を語りたいです。あなたの悩みを解決させてください!いつでも相談に乗ります(^O^)

文章の書き方 (岩波新書)

今日の1冊。大学時代に通っていた個人英会話(ELS)の大先輩であるH・Mさんからご紹介いただいた1冊になります。僕が通っていた旭川にある個人英会話教室は、巷では様々な意味で有名かもしれませんが、多くのレジェンドを輩出しています。アメリカと日本を繋ぐトレーダー、フロリダの旅行会社の会長、高校模試数学日本1位などなど。興味がある方は個人メッセください~。

さて、本書は「文章を書くとは何ぞや」ということを一から考えさせてくれる1冊となっています。私たちは小学校に入学して、何かしらの文章を書かされてきましたが、どんなことを大切にきたでしょうか。

 

文章を書くときは、自分との対話であり、相手に話しかけられながら文章を書くなんて気が散ってできませんよね。本書では、「文章を書く」ということは、「自分の心を表すこと」だと筆者は伝えています。納得です。心が乱れている時は、文章を書くことなんてできない。何かを文字に表せたとしても、読者に伝わる内容が書けるとは到底思えません。

 

それでは、本書の内容に少し触れたいと思います。ちなみに本書の著者、辰濃和男は1975-88年、朝日新聞天声人語を担当していました。ハーバードで日本語を教えていた時に「天声人語」を扱っていたので、当時の授業を思い出しました。 

目次

①「蛇口をしめる」という随筆があります。

女優、沢村貞子が書いたこの随筆をご存知でしょうか。みなさんは、水を無駄にしないように両親から教えられ、「蛇口をきちっとしめる」家庭で育った60歳の女性だったとしましょう。

 

とある日、あなたは手洗い所に入ります。そこには水を出しっぱなしにしながらお化粧直しをしている若い女性がいる。流れ落ちる水を見ているあなたは堪えられません。さあ、あなたならこの状況でどのような行動をとるでしょうか。

 

若い女性に話しかけ、「もう、水がもったいないわよ。これだから最近の若者は・・・」と注意するのか、「水が流れ落ちるのがいたたまれないけれど、うかつに注意すると彼女からどう思われるか・・・」と心の中でつぶやいて何もしないのか。あなたなら、どうしますか。

 

ここでは、沢村は相手の心の動きをきちっと見つめた行動をとります。興味がある方は、是非読んでみてください。

 

②「きれいにあろうたり」

これは子どもの言葉です。みなさんは「ゴキブリ」が家の中に突然現れたら、どんな気持ちになるでしょうか。「汚い」「気持ち悪い」「ほんっとに無理」などでしょうか。

 

「ゴキブリは汚い、だから殺せ」というのが多くの大人の発想ですよね。僕もそうです。ただ、ゴキブリは本当に「汚い」のでしょうか。なにか特別な毒を持っているのでしょうか。

 

幼児にはまだゴキブリが汚いという発想がありません。つまり、「白紙」の心を持っています。だからこそお母さんに対して「きれいにあろうたり」と言うのです。ここで、亀村五郎著『幼児のつぶやきと成長』の一節をご紹介します。

どうして ごきぶりきたないの

かあちゃん

おふろにいれて

きれいにあろうたり

 

二歳の子のつぶやきですが、みなさんは何を感じましたか。この幼児は無心でゴキブリを見ているため、大人には見えないものが見えている、と著者は語ります。

 

汚いところにいるゴキブリは汚いはずだと人は思います。しかし、汚い場所を作っているのは”人間”ですよね。汚いところをきれいにすれば、自然にゴキブリは出なくなるのではないでしょうか。と筆者も僕も思うのです。

 

「白紙の心」で物事を見ることは簡単なことではありませんが、僕たち大人はこの随筆から何を感じなければいけないと思うのです。

 

③「良い先生」と「悪い先生」

みなさんの「良い先生」と「悪い先生」の定義は何でしょうか。作家、山田詠美さんの「『良い先生』と『悪い先生』という随筆があります。そこでは、

「良い先生」とは、子どもが大人と同じように悩み苦しむということ、子どもが大人以上に羞恥心を持っていること、を知っている教師たちです。「悪い先生」とは、子どもを傷つける言葉がどういうものであるかを知らない、つまり、言葉の選び方を知らない教師たちです。

 

非常に考えさせられます。僕は教育学部出身で、小中高の教員免許を持っているので、試験に受かれば(厳密に言えば受からなくても)日本のどこかの学校で教壇に立つことができます。

 

ただ、ここで定義されている「良い先生」になることができるのか、また、「悪い先生」がいた時に、その「悪い先生」たちにどんな言葉をかけてあげるのか、その点に関して考えなくてはいけないと感じました。

 

”先生”として子どもたちの教育に携わっていくことはかなり責任重大な仕事なんだなと痛感します。話は脱線しますが、僕は「お仕事は何をされているのですか?」と教員が尋ねられた時に、「英語教師です」と”~教師”と自分で言う人が正直受け付けません。笑

 

さて、この「文章の書き方」という本は、文章を書く上で重要な要素を非常にわかりやすく伝えてくれているのみならず、多くの学びを提供してくれる本です。ぜひ文章能力を伸ばしたい、自分の心と向き合いたい、と感じている方には読んでいただきたいです。