1日1冊レビューし太郎

おススメの本ご紹介します。本の紹介を通して、自分の人生観や経験などをお話しします。日本の大学を卒業後、ALLEX Programに参加するために渡米。Missouri州のWashington大学、NY州のUnion大学、そしてHarvard大学で日本語教員として働きました。このブログでは、おススメの本の紹介を通して、自分の人生観や経験を語りたいです。あなたの悩みを解決させてください!いつでも相談に乗ります(^O^)

下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち

感動しました。心が震えました、この本を読んで。この本はある都道府県の教育研究所の元所長の方が、教育関係の事業を立ち上げようとしている僕に紹介してくださいました。

[内田樹]の下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち (講談社文庫)

早速ですが、この本を全て語ることはできません。というより、したくありません。(もちろんしたら著作権侵害なので出来ませんが笑)いつも通り印象に残った言葉をいくつか紹介したいのですが、ご察しかと思いますが、実際のところ「いくつか」では収まらないところを「いくつか」に抑えています。ぜひこの本に興味を持った方はご一読ください。Amazonで500円ほどで購入できます。

 

目次

①この本のテーマは「学びからの逃走、労働からの逃走」というものです。

この本のテーマですが、かなり衝撃的ですよね。学生は「学び」からの逃走、大人は「労働」からの逃走。これらの言葉を聞いただけで、みなさんは何を想像するでしょうか。

 

「確かに学生時代、数学の授業が苦痛だったな」「確かに満員電車に乗って会社まで通勤して安月給をこれから30~40年なんてやんなっちゃうよ」などでしょうか。

 

「学びからの逃走」は、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、東京大学教育学部教授の佐藤学さんが使われた言葉で、”教育を受ける機会から進んで逃走してゆく子どもたち”を指しています。僕も本書を読むまで知らなかった言葉だったので、読書をすることって大事ですよね。

 

みなさんは、この言葉を聞いて何を感じたでしょうか。「危機感」なのか「諦め」なのか。「それはいい!積極的に逃走すべきだよね!」と思われた方がいらっしゃるのであれば、手遅れになる前に本書を手にした方がいいでしょう。

 

この本はこれまで私たちが、ぼんやりと違和感を感じていたことを”明確に言語化”してくれています。勉強を嫌悪する子どもはIEA(国際教育到達度評価学会)などの統計データを見れば一目瞭然かと思いますが、このデータから日本の子どもたちは今や世界で最も勉強しない子どもたちになってしまった、ということがわかります。佐藤教授の現状認識を共有します。

日本の子どもたちは小学校高学年から中学校・高校にかけて、大多数が学校の勉強を嫌悪し、勉強から逃走しています。かつて日本の子どもは、世界のどの 国よりも勉強に意欲的に取り組んでいましたが、今や、世界でもっとも勉強を嫌悪し、勉強しない子どもへと転落しています。

より詳しいデータに関しては本書をご覧ください。教育に携わる方のみならず、自分の娘・息子がいる方にとっても、知っておいて損はないのではないでしょうか。

 

②僕は「わからないこと」より、「わからないことがあっても気にならない」ことの方に危機の兆候を感知するのです。

著者は子どもたちの意識について語っています。子どもたちに限らず、僕たちは「わからないもの」に日々遭遇します。ただ、「わからないもの」と出会った時に、

①すぐ調べるのか、②わからないけど調べないのか、③気にならないのか、

 

いずれの選択をしているのか自分自身にも問いかけてみるといいかもしれません。著者は③気にならない子どもたちが増えていると危惧しています。これは相当やばいですよね。気にならないんですもん。「無」と同じ。

 

本当はあるのに、ないものとして扱われている。これはどうしたらいいんですかね?伝えてわかってくれるのでしょうか。この点に関しては非常に緊急性がある、僕たちが取り組まなくてはいけない問題だと思います。わからないことがあっても気にならない、これは人間として深刻な末期症状と考えても過言ではないと思います。

 

③今の子どもたちは、学びの場に立たされた時、最初の質問として、「学ぶことは何の役に立つのか?」と訊いてくる。

非常にシビアな、ある意味で非常にビジネスライクな質問ですよね。その問いには一理あるんですが、果たしてこの質問はそのままにしておいてもいいんでしょうか。

 

教室にじっと座り、沈黙して先生の話を聞いて、ノートを取るというのは、ある種の「苦役」です。この「苦役」を子どもたちはある種の”支払い”と捉えてしまっている。どのような財貨やサービスが「等価交換」されるのかを彼らは問うているわけですね。

 

「私はこれだけ払うんだけど、それに対して先生は何をしてくれるの?」的な言い分になるでしょう。そのような問いに対して、教師は明確な答えが出せるのでしょうか。「できるはずがない」と著者は主張しています。出来ないのが当然である。

 

なぜなら、そんな問いが子どもの側から出てくるはずがない、ということが教育制度の前提だからです。もちろん教師によっては「私の考え」が存在しているわけで、それを子どもたちに伝えられるということは大きな意味があると思います。

 

「義務教育」という言葉を、今の子どもたちは「教育を受ける義務がある」というふうに捉えている節がある。もちろんこれは間違いで、子どもには「教育を受ける義務」なんかないと筆者は伝えています。

 

子どもには「教育を受ける権利」があるだけだと。「その保護するところの娘・息子に普通教育を受けさせる義務を負う」のは親たちなんです。これは意外と大人でも正しく理解していない人がいるのではないでしょうか。

 

話を戻しますが、子どもたちからの「~を学ぶことは何の役に立つのか」という質問がありましたね。みなさんも同様の質問をされた方がいらっしゃるでしょう。

 

みなさん、”答えることのできない問いには答えなくていいのです”。僕が教員だったら、「○○君/ちゃん、それはまず自分で考えなくちゃいけないよ。先生は答えを知っているけど、その答えは自分で見つけなくちゃいけないんだよ」なんて言ってはぐらかすと思います。笑

 

いかがでしたでしょうか。今日読んだ本書はものすごく衝撃的でした。本当にみなさんと共有したくなる、名著といった方がよろしいでしょう。さて、この本を手に取るか、取らないかで、みなさんの教育者としての人生、子育てをしている親としてのみなさんの人生を大きく変えてしまうことでしょう。